恵蘇八幡宮に「羅針盤」があります。そして、三連水車から西北のところに「港」の地名が「織面港（オベタ）」「唐舟木（カラフネ）」とあります。1300年という時をさかのぼっていくと、朝倉はどんなだったんだろうか？
その長い年月は、どんな時を刻んできたんだろうか？
後に天智天皇になられる中大兄皇子が、石の上に座って月見をされた、その言い伝えがある「月見の石」。そのところは、江戸時代に山田堰ができ、三連・二連の水車が回って、田んぼへ水が流れていきます。
また近年では、ペシャワール会の中村哲医師が、この堰をアフガニスタンの灌漑のモデルとされました。今でも筑後川は、流れ続けています。じっとそこにいるだけでいい。 この朝倉で、上座の露は生まれました。

朝倉山（麻氐良山）の麻氐良布神社には、神様の一家がお祀りされています。イザナギ・イザナミの神。そのお子のツキヨミ・アマテラス・スサノオそしてエビスの神々。
「延喜式」神名帳に記された麻氐良布神社に上座郡（カミツアサクラノコオリ）とあります。その地名に由来しています。
また、小倉百人一首の筆頭歌は、先の天智天皇が朝倉で詠まれた和歌です。
秋の田の刈穂の庵の苫をあらみ　わがころも手は　露にぬれつつ
朝倉で、きらりと光るその「露」を名前にいただきました。

私が小さい頃は、「千歳川(ﾁﾄｾｶﾜ)」と呼んでいました。千歳は大和言葉で、長い年月を意味します。
悠久の流れをずっと続けている筑後川と、1300年の「時の旅」をしました。
恵蘇八幡宮・木の丸殿の前まで来ると、そこは広瀬になっていて、その瀬の美しい水は簾(ｽﾀﾞﾚ)を為して下に落ちています。
また九重、阿蘇から出ている水は創世の昔からこの流れとなって止まることが無く、そこにまた千余年の昔を目のあたりに想像し、悠々たる天地、長久なる歴史その感懐が暫らく心を閉ざしてしまいます。